阿波踊り娯茶平非公認ファンクラブ@四十路新人は悲哀を超えるのだ

東京の下町で生まれ育ち、30歳で結婚して、夫の郷里である徳島に引っ越してきました。

 

初めて見た阿波踊りの感動は、人生観も変えてくれました。

 

もっとも心惹かれたのは、年配の、少し太った男性の踊りでした。出っ張ったお腹そのままに、腰をズンと落とし、楽し気に団扇を揺らす男踊りからは、渋い落ち着きと明るい色気が発散されていました。

 

とくに、娯茶平の男踊りは、列の前の方を踊る人達による低い前傾姿勢の踊りと、後方に陣取った年配男性達のこなれた軽い踊りが両立していて、阿波踊りの自由さと奥行きを感じ、震えるほど感動しました。

 

まもなく阿波踊りのDVDを手に入れると、早送りで娯茶平の男踊りを探し、毎晩、何度も繰り返し再生しました。

 

当時は、ダイナミックで自由な、男性の男踊りがとにかく好きでした。

 

一方、娯茶平のモモ(女性の法被踊り)については、綺麗に揃っているなあ、という印象でした。

 

しかし、男性の男踊りを見続ける日々を送った後に、あるタイミングでモモを観たとき、統一感の中にも一人一人の個性があること、統一された踊り自体、手指の先からつま先までくまなく全ての所作が驚愕するほど美しいことに気づきました。

 

そこからは、見るたびに鳥肌が立ち涙が出てくるほど、モモの虜になりました。

 

40歳も終わり頃、娯茶平の公開練習に訪ねていき、入連させていただきたいとお願いしました。

 

娯茶平のモモの踊り子さんは、小学生や10代から始めていて、20代で芸歴20年という人がザラにいる世界だと聞いていました。阿波踊りの頂点にいる精鋭集団だと。

 

また、娯茶平は阿波踊り趣味のサークルというより、お金を受け取って観客に踊りを見せる、プロ集団です。

 

だから、40歳ド新人の私など入れてくれない可能性95%くらいと思いつつの、悲壮な覚悟での申込でした。

 

 

娯茶平の方からは、「年齢的に、今から入っても阿波踊り会館とか選抜に出ることはできないけど、それでもよければ。」と言われました。

 

私はただただ、この凄い人たちと一緒に練習できて、この人たちのように踊れるようになってみたい、という一心でした。

だから、上記の言葉は私にとって、完全な合格通知だったのでした。

 

その後は、娯茶平のスター達と一緒に練習できること、スター達の舞台練習を間近で見られることが嬉しくて嬉しくての毎日でした。(スター達の人柄の素敵さについてはまた別の機会に。)

 

練習のない日も、仕事を終えて家に帰り、急いで家事を済ましながら、隙をみては足さばき、手さばきの自主練をせずにいられませんでした。

 

娯茶平で練習できて、お盆の本番にも出られて、私生活上でこれ以上の幸せはないというくらいの喜びを手に入れることができました。

 

入連して4年が経とうとする今、「年齢的に、今から入っても阿波踊り会館とか選抜に出ることはできないけど」という言葉が、ときどき辛く頭に浮かびます。

上手になりたい一心で毎日毎日練習して、少しずつ上達し、これからもっと上手に踊れるようになったとしても、今の先のステージには行けない。私より後から入った若い人達が、どんどんスターへの道を駆けあがっていく。

 

でも、それはそれで、欲張りな自分の心の持ちようを鍛えなおすチャンスであります。

足るを知り、気楽に、でも真剣に阿波踊りを楽しみ、若いスターを尊敬し応援し続ける。心になんの無理なく、そんなふうに踊りを続けられたらよいなあと思います。


なんか青春。

 

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